トリスのメモ帳(43) 『夢』で『夜空』を照らしたい 千歌と梨子の関係を考える
こんにちはトリスです
さて、当ブログ『トリスのメモ帳』では主にラブライブ!サンシャイン!!のストーリーを扱ってきましたが、今まで意図的に逃げていた題材があります
それはサンシャイン!!のストーリーの根幹に関わるテーマ……つまりは主人公の話です
ここで、これまでの記事を多く読んでいる方は不思議に思われるかもしれません
なぜなら、トリスのメモ帳で高海千歌やAqoursについては何度も扱ってきているからです
しかし、今回扱いたいサンシャイン!!の主人公として設定したいのは個人ではなく『高海千歌と桜内梨子』という二人組です
穂乃果が主人公だったラブライブ!と違い、サンシャイン!!では千歌と梨子がW主人公的な描かれ方をされている部分が多いように感じます
今回は、この二人に関わる様々な状況を改めて確認していきましょう
普通な私の日常に……
……突然訪れた、奇跡
①変な人ね、あなた
サンシャイン!!において千歌が一番最初に抱いた想いは『輝きたい!!』です
その想いを成し遂げるためにスクールアイドルを始めます
そんな時に出会ったのが梨子でした
あなたみたいにずっとピアノ頑張ってきたとか
そんなのひとつもなくて
……私ね、普通なの
それが千歌と梨子の初めての出会いでしたが、二人の関係は二話前半で少し変化します
千歌のスクールアイドルの誘いを最初は丁寧に断っていた梨子も、次第にはっきりと拒否するようになりました
それは同時に二人の間の遠慮が消えたとも言えますが、この時点での梨子から千歌への評価は悪く言うなら「うるさい人」「自分勝手な人」だったかもしれません
だから千歌が海の音を一緒に聞きに行こうと誘った時、梨子はこう返しました
聞けたらスクールアイドルになれって言うんでしょ
けれど、千歌はこれを「だったら嬉しいけど」と前置きした上で、否定します
千歌の想いはこうです
梨子に、ピアノという自分が好きだったものと自分自身を肯定してほしい
なぜでしょうか?
それはきっと梨子にとってのピアノ…つまり『全力で夢中になれる夢』こそ千歌がこれまで望んでも手に入れられなかったものだからだと思います
今スクールアイドルに夢中になっている千歌は、梨子が夢中だったピアノへの想いを取り戻してほしいのだと
海の音を聞ければ何かが変わるのかなって
変わるよ、きっと
簡単に言わないでよ
分かってるよ、でも、そんな気がする
その優しさに触れた梨子は、千歌のことをこう評します
変な人ね、あなた
梨子はこのセリフを二人がより仲良くなった5話でこう繰り返しています
でも、みんなと話して少しずつみんなのこと知って全然地味じゃないって思ったの。それぞれ特徴があって、魅力的で…だから、大丈夫じゃないかなぁって
やっぱり変な人ね。初めて会った時から思ってたけど
何、褒めてるの!けなしてるの!
……どっちも?
確かに『変』というのは褒めてるのか、けなしているのか分かりません
けれど、この冗談のように言う『変な人』という言葉は千歌に対してだけ強い意味を持ちます
なぜなら千歌は普通怪獣
特別ではないけれど普通でもない変な人として、梨子もまた最初から千歌を肯定します
そしてその先の二期6話ではこの言葉が、今まで千歌自身が自分に貼っていた普通怪獣のレッテルをゆっくりと剥がしていく一助になったのかもしれません
こうして千歌と梨子は出会いました
2話「転校生をつかまえろ!」では二人と曜が、海の音をきくために海に潜ります
ひとりでは真っ暗で見えない海の輝きを、曜と千歌と一緒だから見つけ、海の音を聞いた梨子
そしてその後、スクールアイドルへの愛を詞にすることに夢中になっている千歌の姿を眺める梨子の脳裏に浮かんだのは小さい頃の自分でした
ピアノ弾いてると空飛んでるみたいなの!
自分がキラキラになるの! お星さまみたいに!
梨子にとってピアノを楽しむ想いは『星』
それを見失った今の梨子は、星も月も見えない暗い夜空に取り残されているようなもの
だからこそ、千歌の言葉からピアノを楽しんでいた過去の想いを思い出した梨子にユメノトビラが響き、指が振れた瞬間に梨子にとっての何かが変わったのでしょう
そんな梨子がのちに一人で歌うことになるとある曲では次のような歌詞がありました
新しい 夢と涙
溶け合った コンチェルト
スクールアイドルとしての千歌が、初めて笑顔にした相手は梨子かもしれません
②この夢で君の夜空を照らしたい
さて、そろそろ歌詞の話にシフトしたいと思います
私がふたりの関係性を物語の中で重視している理由のひとつに作詞・作曲としての意味があります
未熟DREAMER・MY舞☆TOINGHTなどを除き、Aqoursでの作詞・作曲はこのふたりによって基本的に行われています
昔からピアノをやっている梨子はともかく、千歌は作詞に関しては完全な初心者
ですが『スクールアイドルに恋してる』気持ちを元に作詞することで曲が完成しています
作詞・作曲を主人公である千歌と梨子で完結させることは、その楽曲が完成した意味を読み取りやすくしています
その歌詞がもつ意味を考えていきましょう
ラブライブ!サンシャイン!!において『青空』『夜空』という歌詞はたびたび出てきていますが、これは何を指しているのでしょうか
もちろん、答えは数多く考えられると思いますし、曲によっても変わると思います
例えば青空を一言に「輝き」と言ってもいいし、輝きの象徴である太陽が輝く「ステージ」と捉えてもいいかもしれません
私は、アニメ挿入歌における『青空』は基本的に『未来』と言い換えることが出来ると思っています。例えば、青空Jumping Heartのサビの歌詞を思い出すと分かりやすいかもしれませんね
一期のまとめとなった挿入歌、MIRAI TICKETを見てみましょう
船が往くよ ミライへ旅立とう
青い空笑ってる
鞠莉が言った「この空は繋がっているよ」という言葉も、今は一度離れ離れになる道を選んでも、いつか遠い未来でもう一度出会えることを信じている、と受け取れます
雲の間に間に あたらしい青空が待ってるよ 待ってるよ!
さて、では『青空』が『未来』をさすならば、アニメ世界における『夜空』は何をさすのでしょうか
もし対比になるとすれば、それは『過去』だと思います
さて、ここで話を千歌と梨子に戻しましょう
千歌は「スクールアイドルに恋してる」気持ちを作詞にぶつけていますが、一期後半のとある曲では自分とスクールアイドルの曲の中に間違いなく梨子の存在が強く入った歌詞を書いています
何かをつかむことで 何かを諦めない
どこにいても 同じ明日を信じてる
これは10話で千歌が梨子に向けた歌詞と考えるのが自然でしょう
同時にこれは千歌が作詞して、千歌たち8人が歌った曲……つまり、梨子は一度もステージ上で歌っていません
けれど、その作詞をされたことでメロディー自体が新たな意味を含みます
梨子がこの曲を弾くときにもきっと心の中でこの言葉が響いていたのでしょう
皆さんもつい最近『キセキヒカル』と『起こそうキセキを!』で似た体験をしたのではないでしょうか
ピアノなら 伝えられそう
みんなには 感謝してること
だから だから 何度でも弾きたい
喜びの調べを
そして。
私はこの千歌が梨子への想いを詞に込めたのは、この『想いよひとつになれ』が初めてではないと考えています
「早く歌詞ちょうだい」と言われ、千歌が差し出す歌詞の紙
全ての歌詞が千歌から梨子への手紙だとすれば、何か見えてくるものがあるはずです
例えば『決めたよHand in Hand』
これは劇中で実際に曲として存在しているわけではありませんでしたが、WODNERFUL STORIESのひとつでもあります。歌詞を見返してみましょう
それは君の中に眠ってる情熱
もうすぐ目覚めそう・・・気づいて!
この情熱についての歌唱はちょうど梨子のパートですが、似た表現がPianoforte Monologueでもされています
ずっとずっと 眠ってたの
心の熱い願い
そして『ダイスキだったらダイジョウブ!』で千歌が歌った歌詞はこうでした
温度差なんていつか消しちゃえってね
温度差と言う表現が「自分たちがやりたいと燃える熱さ」と「それを見る人たちからの冷たさ」の対比の意味を表す裏に、『自分の中に持っていた情熱』と『それが眠っていることに凍えていた梨子』の対比もあったのかもしれません
そしてこう考えた時に最も千歌の梨子に対する目標となっていた言葉こそが『夢で夜空を照らしたい』ではないでしょうか
このスクールアイドルと言う輝く夢で、梨子が星のようにピアノを楽しむ心を忘れていた今までの夜空を照らしたい
2話の最後での千歌のセリフはこうでした
梨子ちゃん…やってみない? スクールアイドル
やってみて笑顔になれたら…変われたらまた弾けばいい
諦めることないよ
梨子ちゃんの力になれるなら私は嬉しい
みんなを笑顔にするのが、スクールアイドルだもん!
その言葉が現実になる日が、来ます
③輝きはじめました
10話『シャイ煮はじめました』は、一期の中で私が特に好きな回です
メンバーが揃う9話『未熟DREAMER』を経てのこの回は、言うならば9人のAqoursにとっての第1話のようなものです
この回は絵として日常回的なシーンが多いですが、その裏で展開されていく千歌と梨子の物語……ピアノコンクールよりもAqoursを優先しようとする梨子と、もちろん梨子とステージに立ちたいと願った上でピアノコンクールに送り出す千歌の構図が一期の中でも大きな意味を含んでいます
『冷やし中華はじめました』と被せてタイトルから日常回に見せかけた『シャイ煮はじめました』……それが実はシャイ煮=Shiny=輝きで受け取れば、梨子の自身への肯定を以てピアノという過去の夢が輝きはじめましたというメッセージなのかな、と考えました
これは上の話を踏まえると夢で夜空が照らされていく意味もあり、それは背景にも表れています
サンシャイン!!一期の世界では太陽は全て山側から登り、海側に沈んでいます
これは実際の内浦と同じ方角を意味していて、μ’sが居た東京の側から登った太陽に千歌たちが照らされていることになります
しかし、10話のラストシーンで初めて千歌と梨子の手を繋いだ向こう側、水平線から朝日が昇ります
この時の『内浦から太陽が昇る』ということが『国府津で太陽が沈んだ物語の続きがはじまること』…つまり、Aqoursのラブライブ!が二人の主人公によって始まった感覚があったのです。
それが12話の羽ばたきの時のラストシーンに繋がったとも思います。
そして元を辿れば、あの日砂浜で普通怪獣がある少女の手を握ったことから始まった物語なのではないでしょうか
そんな千歌と梨子の関係性から
『MIRACLE WAVE』
『WATER BLUE NEW WORLD』
『WNDERFUL STORIES』
『One More Sunshine Story』
『Pianoforte Monologue』などについても見えてくるものがあると思います
ぜひ3rdライブでは、そこも注目して頂ければ嬉しいですね
今回はぶれぶれのジョニーさんのイラストを使わせていただきました。
記事の内容について話したところ、私の頭にあった以上の素晴らしい景色を見せてくれました。記事で使うためにコントラストの違うパターンもいくつか用意していただいて本当に嬉しかったです。改めて、ありがとうございます。
そして、今回も最後まで読んで頂きありがとうございます
当ブログが3rdライブ前に更新する記事はこれで最後になります
皆さんがやり残したことなくライブを楽しみ駆け抜けられることを祈っています