トリスのメモ帳(31) μ’sへのありがとう 2016.04.01
その年の4月1日は嘘みたいに桜が満開だった。
4月1日と言えばエイプリルフールだが、この年だけはその日に冗談で嘘をつく余裕はなかった。一番嘘だと信じたいことが、決して嘘ではないことをみんな理解していたからだ。
ただ感情は追いつかなくても頭では納得していた。
誰でも経験はあると思うが、卒業式は寂しいし 別れは辛い。
でもそれが無ければ人は次の場所に進めない。
2016年4月1日
東京ドームで『FINAL LOVELIVE! ~μ’sic Forever~』が行われた。
おかしな話だがμ’sとの別れはこれで四回目になる。
一度目は二期十二話「ラストライブ」
この大会を以てμ’sとしての活動を終わりにすることを決めた9人が一面の光に向かって『KiRa-KiRa sensation!』を歌い、涙のアンコールの末に『僕らは今のなかで』を披露した時、9人がμ’sとして最後までやりきったことを理解した。
だが、最終回がまだ控えてることに安心している自分も居た。
二度目は二期十三話「叶え!みんなの夢――」
卒業式を経て、屋上に水で書かれたμ’sの文字が薄れていく姿に「学生」「青春」という有限の時間の終わりを感じた。
しかし、ボーナスステージの様に劇場版に続く終わり方は、ラブライブ!らしい続きを感じさせる形だったと思う。
三度目は劇場版ラブライブ!でのエンドロール
μ’sがスクールアイドルの素晴らしさを伝えた上で9人の新しい旅立ちの曲を歌った。
この時にラブライブ!のアニメ内の物語が幕を閉じた形になる。
私はこの時本当にアニメのμ’sが終わったとは思っていなかった。
一般的に2.5次元コンテンツは大きく分けてアニメとライブそれぞれでキャラとキャストが活躍するものだと考えられているが、実際にハマってみるとアニメでのキャスト・ライブでのキャラの存在の大きさに驚くことが少なくない。
アニメ映像としてのラブライブ!はこれで終わるかもしれないが、ライブで再現されたときに初めて穂乃果たちの物語も完成すると思っていたからだ。
だから、ファイナルライブを終えるまではキャストμ’sだけでなくキャラクターのμ’sとも歩み続けている感覚があった。
そして四度目の別れとなるこの日、μ’sとμ’sはファイナルを迎えた。
ダブルアンコールの『僕たちはひとつの光』では劇場版では描かれなかったそれぞれの衣装が9色に染まりμ’sが飛び立つ姿を見届けた。
9人のキャラと9人のキャストと10人目の『僕ら』が駆け抜けた最高のライブだった。
会場を出ると強い雨が降っていたのをよく覚えている。
その日のそれから先のことはよく覚えていない。
2016年4月2日、私たちは五年先の世界にとり残された。
μ’sが作中で駆け抜けた一年間はいつだったのかを私は知らない。
13年度の3rd・4thでもμ’sの物語と現実での人気の勢いはシンクロしていた。
14年度の二期と5thでは描いた物語が現実になっていく感覚があった。
そして15年度の劇場版やFINALもそうだった。
さらに言えばもっと前からだろうが、その全ての年がμ’sの駆け抜けた一年間と重なっていた。
2016年4月2日以降、それまでファンも驚く勢いで出ていたグッズ等の供給がほぼ無くなった。
数か月前まで秋葉原を歩けばどこも店頭で流していたμ’sの曲が聴こえなくなった。
μ’sの駆け抜けた一年間の“その先”に現実がシンクロし始めていた。
話が変わるが、ラブライブ!サンシャイン!!の舞台はラブライブ!の物語終了から一年後、穂乃果たちが駆け抜けた五年後の世界である。
そこでは音ノ木坂に通っていたのにμ’sを知らない生徒が居るほどだ。
たぶん2016年4月2日から、それまでラブライブ!とシンクロしていた世界が、ラブライブ!サンシャイン!!とシンクロする世界に変わったのだと思う。
私はμ’sがFINALを迎えた後の世界に自分が居ることが不安だった。
そしてμ’sがどうしても大好きで、そのぶんだけ辛かった。
いつかAqoursも同じようにFINALを迎えるのならどういう覚悟でそれを見届ければいいのか分からなかった。
あの日から二年が経った。
だが、今の自分を見直してみて気付いたのは、物語がFINALを迎えても、いつまでもμ’sを好きでいる自分にとって未来永劫μ’sが消えることはないということだった。
今でもμ’sが好きで、これからもμ’sが好きだからラブライブ!は終わらない。
終わらない青春はあの瞬間あの場所にあった。
それが今も、まだ終わってない。
同じように、何があっても私にとってのラブライブ!サンシャイン!!も終わらないのだと思う。
けれど目を背けてはいけない。
もうAqoursとの一度目の別れは済んでいる。
あの9人が浦女の生徒として一日を過ごすことはもうない。
いつか来るその時にやりのこしたことなどないと言うため、Aqoursに対しても妥協なく向き合っていきたい。全ての曲やキャラクターと真剣に向き合っていきたい。
これを読んでいる方の中にはμ’sを全力で追いかけてきた人も、そうじゃない人も居るだろうが、伝えておきたいことがひとつある。
全力で楽しんできた人間にとって
ファイナルライブは今までその曲を聴いて過ごした楽しかった時間・想いが卒業アルバムをめくるように押し寄せてくる。
それだけが涙を流しながらでも笑って手を振る力になる。
だから『ホンキで駆け抜けて』
そしてμ’sに向けて、二年越しにもう何度目かも分からないお礼を言う。
最高の「今」を、本当にありがとう
みんなで叶えた物語 2016.04.01